別荘地としての伊豆、そして「暮らす場所」としての今
― 週末の土地から、日常の居場所へ ―
伊豆は、長く日本を代表する別荘地として親しまれてきました。
我が地元伊豆の国市も
・富士見ニュータウン
・小松ケ原
・エメラルドタウン
・ダイヤランド(函南町)
等複数の別荘地があり、都心からの距離、海と山に囲まれた自然環境、温泉をはじめとする観光資源。これらが重なり、「週末を過ごす場所」「非日常を味わう場所」として、多くの人に選ばれてきた地域です。
しかし近年、伊豆の風景は少しずつ変わり始めています。
別荘として建てられた家が使われなくなり、定住人口は減少する一方で、移住や二拠点生活を検討する人が増えています。
伊豆は今、「訪れる場所」と「暮らす場所」の間で、大きな転換期を迎えているように感じます。
宮下 和大 / Takahiro Miyashita
一級建築士 / 一級建築士事務所 宮下建築 開設者
らくがき設計事業部 主宰(静岡県・伊豆の国市)
大工歴50年以上の父とともに工務店を運営し、「らくがきからはじまる家づくり」をコンセプトに 、新築住宅・リフォーム・リノベーション・タイニーハウス・中古住宅+インスペクションまで幅広く手がける一級建築士。
住宅はもちろん、社寺などの非住宅建築にも対応し、設計から施工まで一貫した家づくりを行っています。
私たちが大切にしているのは、施主の想いを最大限に生かす“施主主導の設計”。
間取りの検討から素材選びまで、施主が「自分で設計した」と実感できる家づくり体験を提供しています。
デザインだけでなく、コスト・断熱・耐震など建築の基本性能もしっかり押さえ、ライフスタイルに合った
“ちょうどいいサイズ”の住まいをご提案。地元工務店ならではの柔軟な対応と長期的なサポートで
安心して暮らせる家づくりを目指しています。
別荘地として発展してきた伊豆の背景
伊豆が別荘地として発展した理由は、非常に分かりやすいものでした。 都心から比較的近く、鉄道や道路網が整備され、温暖な気候と豊かな自然があること。
高度経済成長期以降、余暇を楽しむ文化が広がる中で、伊豆は「気軽に手の届くリゾート」として位置づけられてきました。 その結果、山間部や海沿いには多くの別荘地が造成され、週末や長期休暇に人が訪れる地域として賑わいを見せてきました。
一方で、住民の高齢化、管理放棄物件の増加等、徐々に問題が表面化してきています。
使われなくなった別荘と、地域の現実
現在、伊豆の別荘地を歩くと、「使われていない家」が目につく場所も少なくありません。
所有者の高齢化、ライフスタイルの変化、相続後の管理負担。さまざまな理由から、別荘は「持ち続けるのも面倒な存在」になりかけています。
こうした家は、空き家として地域に残ります。
人の気配がなくなると、建物は急速に傷み、周囲の景観や安全面にも影響を及ぼします。
別荘地として発展してきた伊豆も、こうした課題に直面しています。
それでも伊豆が持つ「暮らす場所」としての力
一方で、伊豆は決して「過去の別荘地」ではありません。 実際に暮らす視点で見直すと、伊豆には他の地域にはない魅力があります。
・自然との距離が近い
・四季の変化を日常の中で感じられる
・都市部に比べ、土地や住まいの選択肢が広い
・人と人の距離が近く、顔の見える関係が残っている
これらは、移住を考える人にとって大きな価値です。
特に子育て世帯や、コロナ後働き方が多様化した世代にとって、都心からのアクセスが比較的容易でありながら、地方的要素を多く持つ伊豆はさらに生活の拠点として魅力を増しています。
移住という選択が現実的になった理由
かつて、伊豆への移住は「思い切った決断」でした。
仕事、教育、医療。都市に集中していた機能が、地方移住のハードルになっていたからです。
しかし今は、リモートワークや多拠点生活が広がり、必ずしも職場の近くに住む必要はなくなりました。
オンラインで完結する手続きやサービスも増え、伊豆で暮らしながら都市とつながることが、現実的な選択肢になっています。
別荘を「住まい」に変えるという考え方
伊豆には、すでに多くの住宅ストックがあります。 それは、新しく建てることだけが選択肢ではない、ということでもあります。
・使われなくなった別荘を住まいとして再生する
・中古住宅を購入し、自分たちの暮らしに合わせて手を入れる
・二拠点生活から始め、徐々に定住へ移行する
こうした段階的な移住の形は、伊豆と非常に相性が良いと感じます。いきなり「移住ありき」ではなく、「まずは暮らしてみる」という選択ができる地域だからです。
最近目にする古家付格安物件も移住のハードルをぐっと下げる要因になっています。
地域との関わりが、暮らしを支える
伊豆での暮らしは、自然環境だけで完結するものではありません。 地域の人との関わりが、日常の安心感や楽しさにつながります。
最初は距離を感じることがあっても、顔を合わせ、言葉を交わす中で、少しずつ関係が育っていきます。
観光地として知られる伊豆ですが、生活者の視点で見ると、昔ながらの地域性が今も色濃く残っています。
「住む場所」を選ぶということ
移住を考えるとき、多くの人が「便利さ」と「豊かさ」の間で迷います。
伊豆は、その二つを完全に両立する場所ではないかもしれません。
しかし、 自然の中で暮らすこと。 時間の流れを感じながら生活すること。 人との距離を取り戻すこと。
こうした価値を大切にしたい人にとって、伊豆は十分に「住む場所」となり得ます。
別荘地から、暮らしの舞台へ
伊豆は今、別荘地という役割を終えつつあるのではなく、役割を変えつつあるのだと思います。
週末の非日常から、日々の生活の舞台へ。
使われなくなった家や土地は、視点を変えれば、これからの暮らしを受け止める余地でもあります。
伊豆で暮らすという選択は、自然に囲まれた場所で、少し違う時間の使い方を始めることなのかもしれません。
伊豆への移住は、何かを大きく変える決断のように見えるかもしれません。
けれど実際には、今の暮らしをすべて手放すことから始める必要はありません。
週末を過ごしてみる。
季節を変えて何度か訪れてみる。
空き家や別荘、地域の人の話に少し耳を傾けてみる。
そうした小さな体験の積み重ねが、「ここで暮らす」という感覚を少しずつ現実のものにしていきます。
伊豆には、使われなくなった家や土地、そして人々を受け入れる地域体制があります。
観光地として知られるこの場所には、日常を丁寧に重ねていける静かな暮らしも、確かに息づいています。
移住とは、理想の暮らしを一気に手に入れることではなく、 自分たちのペースで暮らし方を選び直すことなのかもしれません。
伊豆での暮らしが、あなたやご家族にとっての新しい選択肢になるかどうか。 その答えを探すために、まずはこの土地に触れてみるところから始めてみてはいかがでしょうか。
地域のパイプ役として検討段階からご相談をお受けしております。相談はお問い合わせフォームやInstagramからお気軽にご連絡ください。
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