「ニッチ」「ヌック」だけじゃない
若い施主が注文住宅に“個性”をプラスするために選ぶ空間要素とは
注文住宅を検討する比較的若い世代の施主から、 近年よく聞かれるキーワードがあります。
それが「ニッチ」や「ヌック」です。
SNSや住宅系メディアでも頻繁に取り上げられ、 「おしゃれ」「使いやすい」「自分たちらしい」といった評価とともに、 間取り検討の初期段階から要望として挙がることも珍しくありません。
しかし、実際の家づくりの現場では、 ニッチやヌックは“入口”にすぎません。
その奥には、
「限られた面積の中で、どう個性を表現するか」
「生活の中に、どう居場所や余白をつくるか」
という、より本質的なテーマがあります。
本コラムでは、
ニッチ・ヌックを含め、
若い施主が注文住宅で“個性を足すため”に選びやすい空間要素を整理し、
さらに、ニッチやヌック以外にも使われている要素をいくつか紹介します。
宮下 和大 / Takahiro Miyashita
一級建築士 / 一級建築士事務所 宮下建築 開設者
らくがき設計事業部 主宰(静岡県・伊豆の国市)
大工歴50年以上の父とともに工務店を運営し、「らくがきからはじまる家づくり」をコンセプトに 、新築住宅・リフォーム・リノベーション・タイニーハウス・中古住宅+インスペクションまで幅広く手がける一級建築士。
住宅はもちろん、社寺などの非住宅建築にも対応し、設計から施工まで一貫した家づくりを行っています。
私たちが大切にしているのは、施主の想いを最大限に生かす“施主主導の設計”。
間取りの検討から素材選びまで、施主が「自分で設計した」と実感できる家づくり体験を提供しています。
デザインだけでなく、コスト・断熱・耐震など建築の基本性能もしっかり押さえ、ライフスタイルに合った
“ちょうどいいサイズ”の住まいをご提案。地元工務店ならではの柔軟な対応と長期的なサポートで
安心して暮らせる家づくりを目指しています。
なぜ若い施主は「ニッチ」や「ヌック」に惹かれるのか
まず、ニッチやヌックが支持される理由を整理してみましょう。
ニッチが好まれる理由
ニッチとは、壁の厚みを利用した小さなくぼみ空間です。
・玄関の飾り棚
・リビングのディスプレイスペース
・スイッチやインターホンの集約
などに使われることが多く、 「場所を取らずに、雰囲気を変えられる」という特徴があります。
若い施主にとっては、
・家具を増やさずに個性を出せる
・生活感と装飾を分けられる
・SNSで見たイメージを再現しやすい
といった点が魅力になっています。
ヌックが好まれる理由
ヌックは、リビングや廊下の一角につくる小さな居場所です。
・読書
・子どもの遊び
・ちょっとした作業
など、用途を限定しすぎない点が特徴です。
ヌックが支持される背景には、
・「常にリビングで家族と一緒」では疲れる
・でも完全な個室は要らない
・その時々で使い方を変えたい
という、現代的な距離感があります。
ニッチ・ヌックは「主役」ではなく「調味料」
ここで重要なのは、 ニッチやヌックは、家の主役ではないという点です。
・間取りの骨格
・採光・通風
・動線
こうした基本が整っていないと、 ニッチやヌックはただの“おしゃれ要素”で終わってしまいます。
逆に言えば、 基本が整っている家ほど、 こうした小さな要素が効いてきます。
ニッチ・ヌック以外に、個性をプラスする要素
① 「造作ベンチ・造作カウンター」
比較的若い施主に人気が高まっているのが、 造作ベンチや造作カウンターです。
・ダイニング横のベンチ
・窓際のカウンター
・階段下の作業スペースカウンター
既製品の家具ではなく、 建物と一体でつくることで、
・サイズがぴったり合う
・動線を邪魔しない
・空間に“意味”が生まれる
という効果があります。
造作要素は、 「何をする場所か」を施主自身が考えるきっかけにもなり、 結果として暮らし方そのものがデザインされていくのが特徴です。
② 「半屋外的スペース(インナーバルコニー・土間)」
完全な室内でも、完全な屋外でもない、 半屋外的なスペースも若い施主に好まれています。
・玄関土間
・インナーバルコニー
・屋根付きデッキ
これらは、 趣味 子どもの遊び ちょっとした作業 といった、 「生活の幅」を広げる役割を持ちます。
特に、
・都市部で庭が取りにくい
・天候に左右されず使いたい
という条件下では、 室内の延長として使える半屋外が、 住まいの個性として機能します。
③ 「見せる収納・隠す収納の切り替え」
若い施主世代は、 収納に対して非常にシビアです。
・すべて隠すと味気ない
・すべて見せると散らかる
そのため、 見せる場所 隠す場所 を意識的に切り替える設計が、 個性づくりにつながります。
例えば、
・リビングは見せる
・パントリーは隠す
・子どもスペースは成長に合わせて使いやすく
といったように、 生活の変化を前提にした収納計画が、 結果的に「その家らしさ」になります。
④ 「天井の高さ・素材でつくる変化」
間取りを大きく変えなくても、
天井の高さや素材を変えるだけで、 空間の印象は大きく変わります。
・一部だけ天井を低くする
・木や塗り壁を使う
・梁を見せる
これらは、 面積を増やさずに 心理的な広がりや落ち着きをつくる手法です。
若い施主は、 こうした“体感的な違い”を重視する傾向があり、 SNSの写真以上に、 実際に体験したときの印象が決め手になります。
「個性」は足すものではなく、選ぶもの
ニッチやヌックを含め、 個性をプラスする要素を見てきましたが、 共通して言えることがあります。
それは、 個性とは、 特別なものを足すことではなく、 何を残し、何を削るかを選ぶこと。
という点です。
・すべてを盛り込まない
・使わない要素はつくらない
・暮らしに合うものだけを選ぶ
この取捨選択こそが、 注文住宅ならではの価値です。
若い施主の家づくりで大切な視点
最後に、 若い施主が「ニッチ」「ヌック」などの要素を検討するときに、 意識しておきたい視点をまとめます。
・その空間は、5年後も使っているか
・家族構成が変わっても活きるか
・掃除・管理が負担にならないか
これらを考えたうえで選ばれた要素は、 流行に左右されず、 長く愛着を持てる個性になります。
ニッチやヌックは「入口」、本当の個性はその先にある
ニッチやヌックは、 若い施主が注文住宅に興味を持つ、 とても分かりやすい入口です。
しかし本当の個性は、
・暮らし方
・家族との距離感
・生活のリズム
こうした目に見えにくい部分を、 どう空間に落とし込んだかに現れます。
ニッチやヌックをきっかけに、 「自分たちは、どう暮らしたいのか」 を考えること。
それこそが、 注文住宅ならではの家づくりなのではないでしょうか。
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