FIT終了後、太陽光発電の「これから」をどう考えるか

query_builder 2026/01/14
コラム
売電を続ける

― 地方の木造住宅における余剰電力の新しい使い方 ―


太陽光発電を搭載した住宅が増えてから10年以上が経過し、近年「FIT(固定価格買取制度)が終了したあと、余った電気はどうすればいいのか?」という相談を多く耳にするようになりました。

特に、敷地に余裕があり、日照条件にも恵まれた地方の木造住宅では、太陽光発電のポテンシャルが高い一方で、その活かし方に悩むケースも少なくありません。

本コラムでは、FIT終了後の余剰電力をどう扱うべきかについて、地方住宅ならではの視点で整理し、現実的な選択肢をご紹介します。

この記事を書いた人

宮下 和大 / Takahiro Miyashita

一級建築士 / 一級建築士事務所 宮下建築 開設者
らくがき設計事業部 主宰(静岡県・伊豆の国市)

大工歴50年以上の父とともに工務店を運営し、「らくがきからはじまる家づくり」をコンセプトに 、新築住宅・リフォーム・リノベーション・タイニーハウス・中古住宅+インスペクションまで幅広く手がける一級建築士。

住宅はもちろん、社寺などの非住宅建築にも対応し、設計から施工まで一貫した家づくりを行っています。

私たちが大切にしているのは、施主の想いを最大限に生かす“施主主導の設計”。
間取りの検討から素材選びまで、施主が「自分で設計した」と実感できる家づくり体験を提供しています。
デザインだけでなく、コスト・断熱・耐震など建築の基本性能もしっかり押さえ、ライフスタイルに合った
“ちょうどいいサイズ”の住まいをご提案。地元工務店ならではの柔軟な対応と長期的なサポートで
安心して暮らせる家づくりを目指しています。

一級建築士(大臣登録361765号) 既存住宅状況調査技術者(インスペクター) 木造住宅・リフォーム設計 / 監理 伊豆の国市・函南町・伊豆市・三島市・裾野市・御殿場市・沼津市.etc
Instagramでプロフィール・実績を見る



FIT終了とは何か ― まず現状を整理する


FIT(固定価格買取制度)は、住宅用太陽光発電で余った電気を、国が定めた価格で一定期間(住宅用は10年間)電力会社が買い取る仕組みです。

導入当初は売電単価が高く、「電気を売ることで元が取れる」「売電収入がある住宅」という考え方が一般的でした。

しかし、10年の買取期間が終了すると、 電力会社によって条件が異なりますが、売電単価が大幅に下がる もしくは、ほとんど値が付かない現状です。

その結果、「売るよりも、自分で使ったほうが得なのでは?」という時代に移行してきています。


地方の木造住宅が持つ“エネルギー的な強み


” FIT終了後の話をする前に、地方の木造住宅が持つ特性を整理してみましょう。


・屋根面積が比較的大きく、太陽光パネルを載せやすい

・周囲に高い建物が少なく、日照条件が安定している

・敷地に余裕があり、設備更新や後付けの選択肢が多い


都市部に比べ、電力インフラが災害の影響を受けやすい地域もありますが、これらの条件は「余剰電力をどう使うか」を考える上で、非常に大きなアドバンテージになります。


選択肢①:売電を続けるという考え方


FIT終了後も、電力会社との契約を切り替えることで、余剰電力を売り続けることは可能です。


メリット としては

・仕組みを変えずに済む

・初期投資が不要

・手続きが比較的簡単


デメリット としは

・売電単価が非常に低い

・将来的に条件がさらに厳しくなる可能性


 平日の昼間は共働きで電力使用が少ない現役世代夫婦の場合、売電割合が多い分、売電しても金額的なメリットを感じにくくなるケースが多く、“とりあえずの選択”として位置づけられることが増えています。


選択肢②:蓄電池を導入するという判断


余剰電力活用の代表的な選択肢として挙げられるのが、家庭用蓄電池です。

メリットとしては

・昼間に発電した電気を夜間に使える

・災害時の非常用電源として活躍

・電力会社からの購入電力量を減らせる


デメリットとしては

・初期費用が高い

・設置スペース・メンテナンスの検討が必要

・ライフスタイルに合わないと効果が薄い


地方の木造住宅では、設置スペースの自由度が高いため導入しやすい反面、導入コストが高い為「本当に必要か?」を見極めることが重要です。

日常使いよりも、 災害対策 ・停電リスクへの備えや、将来の電気料金上昇への保険 といった安心感を重視する方に向けた選択肢と言えるでしょう。

蓄電池を導入する際は自治体でも助成を行っていたりするので一度確認してみてください。




選択肢③:取り外して処分する



静岡県は予てより巨大地震への備えの必要性が叫ばれてきました。

構造的に考えると2階建ての住宅の屋根に重量物を載せるということは地震に対して最も大きなリスクの一つと考えられます。

さらに、太陽光パネルや架台の劣化や故障による風害や火災の発生、メンテナンスが行われないことによる発電停止や発電効率の低下等、太陽光発電による負の部分も注目されるようになりました。

太陽光パネルの処分方法に関する開発が進められていることもあり、売っても安い、蓄電池設置やメンテナンスにお金がかかるという現状においては取り外して処分したいと考える方も少なくありません。

設備を維持し続けるコストと処分時に掛かるコスト、どちらもコストがかかるのならば構造的な安全性を優先する選択肢も一つありかもしれません。


選択肢④:電気自動車(EV)との組み合わせ


近年注目されているのが、電気自動車を“動く蓄電池”として活用する考え方です。

昼間に太陽光で充電 →夜や非常時に住宅へ電力供給

ガソリン代の削減にもつながり、地方では車が生活必需品であることが多い為、EVとの相性は非常に良好です。

将来的に車の買い替えを検討している家庭では、住宅と車を一体で考えるエネルギー設計が重要になってきます。

余剰電力を使っての充電は基本昼間しかできないので、外出予定の数日前から車のバッテリー管理が必要になります。


「売る家」から「使いこなす家」へ


FIT制度が始まった当初、太陽光発電は「売る設備」という位置づけでした。

しかし今後は、 電気をどう使うか 、暮らしにどう組み込むか 、災害時にどう役立てるか 、という生活視点での価値が問われる時代に変わっています。

特に地方の木造住宅は、 自然環境も良く、設計の自由度も高く、生活の自由度も高いといった強みがあります。

その強みを活かし、FIT終了後も余剰電力を“無駄にしない家”を実現していきましょう。


余剰電力は「暮らしの選択肢」


FIT終了は、太陽光発電の価値が下がることではありません。 むしろ、 「売る前提の設備」から 「自分たちの暮らしを支えるエネルギー」へ と考え方を切り替えるタイミングです。

地方の木造住宅だからこそできる、 無理のない自家消費・防災への備え・将来を見据えたエネルギー活用を考えていきましょう。

余剰電力の使い方を考えることは、 これからの住まい方・暮らし方そのものを見直すことにつながります。

家とエネルギーを切り離さず、 「どう暮らしたいか」から逆算することが、FIT終了後の最も大切な視点ではないでしょうか。

NEW

  • GX志向型住宅とは?ー伊豆に本当に合う家づくり

    query_builder 2026/02/13
  • リノベーションという選択肢

    query_builder 2026/02/12
  • 伊豆で相続した空き家 | 売る・貸す・直すの判断基準

    query_builder 2026/02/09
  • いえづくりのお金と制度|予算・見積・省エネ基準の考え方

    query_builder 2026/02/09
  • 伊豆の空き家・相続住宅の悩み|活かす・直す・手放す判断軸

    query_builder 2026/02/06

CATEGORY

ARCHIVE