伊豆の町でも増える空き家・住宅ストック問題を、地域工務店の目線で考える
― 建て続けてきた側だからこそ、今考えたいこと ―
伊豆のまちを車で走っていると、誰も住んでいない家に気づく場面が増えました。
草が伸び、雨戸が閉まり、夜になると灯りがともらない家。
観光地として人が集まる一方で、生活の場としては少しずつ空洞化している――そんな印象を持つ方も少なくないのではないでしょうか。
この状況は、統計の数字以前に、私たち地域工務店が日々の現場で感じている「肌感覚」です。
伊豆という地域で長く家づくりに関わってきた立場から見ると、空き家・住宅ストック問題は、決して他人事ではありません。
宮下 和大 / Takahiro Miyashita
一級建築士 / 一級建築士事務所 宮下建築 開設者
らくがき設計事業部 主宰(静岡県・伊豆の国市)
大工歴50年以上の父とともに工務店を運営し、「らくがきからはじまる家づくり」をコンセプトに 、新築住宅・リフォーム・リノベーション・タイニーハウス・中古住宅+インスペクションまで幅広く手がける一級建築士。
住宅はもちろん、社寺などの非住宅建築にも対応し、設計から施工まで一貫した家づくりを行っています。
私たちが大切にしているのは、施主の想いを最大限に生かす“施主主導の設計”。
間取りの検討から素材選びまで、施主が「自分で設計した」と実感できる家づくり体験を提供しています。
デザインだけでなく、コスト・断熱・耐震など建築の基本性能もしっかり押さえ、ライフスタイルに合った
“ちょうどいいサイズ”の住まいをご提案。地元工務店ならではの柔軟な対応と長期的なサポートで
安心して暮らせる家づくりを目指しています。
伊豆特有の空き家が生まれる背景
伊豆の空き家には、いくつかの特徴があります。
・親世代が暮らしていた家を、子世代が相続したが遠方に住んでいる
・別荘として使われていたが、利用頻度が下がり管理されなくなった
・集落の中にあり、売却や活用のイメージが湧かない
これらは、都市部とは少し異なる地方特有の事情です。 「いずれ使うかもしれない」「思い出があるから壊せない」 そうして時間が止まったままの家が、伊豆のあちこちに点在しています。
空き家は「手が入らなくなった家」
現場で家を見ていて感じるのは、空き家の多くが「使えない家」ではないということです。 少し手入れ・改修すれば、今でも十分に暮らせる構造の家は少なくありません。
伊豆は、気候の影響を受けやすい地域です。 湿気、潮風、台風。 人が住まなくなると、こうした環境の影響を一気に受け、家は急速に傷みます。
つまり、空き家問題の本質は、**築年数ではなく「人の手が離れてしまったこと」**にあります。
新築が悪いわけではない
もちろん、新築住宅には価値があります。 環境・省エネ性能、快適性、安心感。 子育て世帯や移住者にとって、新築という選択が最も合理的だという場面も多いでしょう。
ただ、伊豆という地域に限らずとも日本全体で、「新しく建てる」ことだけがすまいづくりの解決策ではなくなってきています。
新築が増える一方で、既存の家が使われずに残り続ける――この状態が続けば、地域全体のバランスは崩れていきます。
地域工務店が見てきた「惜しい家」
私たちは、解体の相談を受けることもあります。 その際、「この家は直せばまだ使えるのに」と感じることが少なくありません。
静岡県は予てより巨大地震の脅威が伝えられていることもあり、他地域に比べ構造基準が厳しく設定されてきました。その結果構造的にはしっかりしていることが多く。地域柄立地も悪くない。 日当たりも風通しも良い。 それでも、「古いから」「誰も住まない」という理由で壊されていく家をたくさん見てきました。
これは、決して施主の判断が悪いという話ではありません。 相談できる相手や、別の選択肢が見えにくかっただけなのだと思います。
住宅ストックを「未来の選択肢」として捉える
これからの伊豆の住まいづくりで大切なのは、住宅ストックを「問題」ではなく、「資源」として捉え直すことです。
・中古住宅を購入し、性能を整えて住む
・実家や空き家を、今の家族構成に合わせて手直しする
・一度住まいとして役目を終えた家を、別の使い方で活かす
こうした選択肢は、地方だからこそ現実味を持ちます。
「建てる」から「つなぐ」仕事へ
地域工務店の役割も、少しずつ変わってきていると感じています。
新築を建てる技術だけでなく、既存住宅を見極め、直し、次につなぐ力。
家を一度きりの商品として扱うのではなく、 地域の中で循環するストックとして扱う視点が求められています。
これは、仕事を減らす話ではありません。 むしろ、地域に必要とされる仕事を増やす話です。
意識を変えると、家づくりの景色が変わります。
「新しい方が良い」
「古い家は不安」
そうした感覚は自然なものです。
ただ、その前に一度立ち止まって、 「この家は、どう手を入れれば使えるだろうか」 と考えてみるだけで、選択肢は大きく広がります。
伊豆のまちには、まだ活かされていない家が数多くあります。
それらをどう扱うかは、これからの地域の姿そのものにつながっています。
地域工務店として、これからも住まいを見続ける
私たちは、この地域で家を建て、直し、暮らしを見てきました。
住まいは、建てた瞬間ではなく、住み続けられることで価値を持ちます。 空き家・住宅ストック問題は、決して暗い話題ではありません。
住まいを大切に扱い、次へと受け渡す文化を取り戻すきっかけです。
伊豆で暮らし、伊豆に住まいを残していくために。 これからの家づくりは、「どれだけ建てるか」ではなく、 「どれだけ住まいを未来につなげるか」が問われているのだと思います。
かつて伊豆では、家づくりを考え始めると、まず親に相談し、知り合いの大工さんや地域の工務店を紹介してもらうのが当たり前でした。
土地のこと、家のこと、職人のこと。暮らしに関わる情報は、家族や身近な人のつながりの中に自然と集まっていたように思います。
近年は、モデルハウスを見に行き、完成されたイメージの中から家を選ぶ時代になりました。
現場で家をつくる職人さんも、近所の顔なじみの大工から、どこかで手配されたチームへと変わりつつあります。
便利さの一方で、家づくりが少し遠いものになってしまった感覚を持つ方もいるのではないでしょうか。
家族で新しい暮らしを思い描くこのタイミングだからこそ、一度立ち止まって、親や兄弟とも家の話をしてみる。
身近に使われていない土地や建物はないか。 頼れる人や、まだ知られていない地域の資源はないか。
そうした「近くにある掘り出し物」に目を向けることで、住まいの選択肢は思いがけず広がることがあります。
私たちは、伊豆で長く住まいづくりに関わってきた立場として、こうした相談の入り口からお話を伺っています。 まだ具体的な計画がなくても構いません。
家族や地域とのつながりを手がかりに、これからの暮らしを整理するところから始めてみませんか。
ご相談は、お問い合わせフォームまたはInstagramにて受け付けています。
伊豆での家づくりを、身近なところから一緒に考えてみましょう。
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